「貸借対象表」は経理部門の方以外には馴染みがないでしょう。
実は、会社の『安全性』がわかる重要な書類です。
見るPOINTがわかれば、数値で判断できます。
わかってくればおもしろい!
貸借対照表とは
財務諸表
財務諸表は、一般的には『決算書』とも呼ばれていますが、上場企業および非上場の大企業は、決算報告の開示義務があるので、開示後は誰でも見ることができます。
報告書類の中でも『財務三表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書)』は企業の経営状態、財務状態、お金の流れを見る重要な書類です。
財務三表によって、企業を数値で分析できます。
- 損益計算書 ▶︎企業の『成長性と収益性』
- 貸借対照表 ▶︎企業の『安全性』
- キャッシュ・フロー計算書 ▶︎企業の『資金の使い方』
貸借対照表
企業の財務状態を知ることができる財務諸表(決算書類)です。
『総資産=負債+純資産』が記載されており、狭義で言えば『あつめた資金(他人資本+自己資本)でどのように資産を運用しているか』を見ることができます。
会社で経営に参画する者として、または投資家として、いずれの視点においても、その企業の『安全性』を確認するために必ず目を通す資料です。
『貸借対照表』について、確認すべきポイントを簡単に説明します。
貸借対照表の項目
資産の部
① 流動資産
1年以内に現金化(費用化)できる資産を指します。
項目例として…
- 現金預金(普通預金、当座預金、定期預金etc)
- 売上債権(受取手形、売掛金etc)
- 有価証券(株式、債権etc)
- 棚卸資産(商品、製品、原材料、貯蔵品etc)
- その他流動資産(未収金、短期貸付金、貸倒引当金etc)
流動資産の内、換金性が低い項目(棚卸資産etc)を除いた資産(現金、売掛金、有価証券etc)を『当座資産』と言います。
② 固定資産
長期にわたって使用(利用)する資産を指します。
項目例として…
- 有形固定資産(土地、建物、機械及び装置、車両運搬具etc)
- 無形固定資産(電話加入権、借地権、特許権、ソフトウエアetc)
- 投資その他資産(投資有価証券、長期貸付金、敷金、繰延税金資産etc)
③ 繰延資産
創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債発行費など、既に代価支払が完了もしくは支払義務が確定しているが、将来にわたって効果をある費用を資産に繰り延べて計上します。
負債の部
① 流動負債
1年以内に支払が発生する負債を指します。
項目例として…
- 支払手形及び買掛金
- 短期借入金
- 未払金
- 賞与引当金
- 繰延税金負債 etc
② 固定負債
1年以内に支払が発生しない負債を指します。
項目例として…
- 社債
- 長期借入金
- 退職給与引当金
- 負ののれん etc
M&Aにて、買収企業の純資産額にノウハウやブランド力などの見えない価値をプレミアムとして乗せて買収します。その買収価格と純資産額の差額を『のれん』と言い、固定資産(無形固定資産)に計上します。
逆に、簿外債務や訴訟リスクなどによって、買収価格が純資産額よりマイナスが生じた場合は、その差額を『負ののれん』と言い、固定負債に計上します。
純資産の部
① 株主資本
純資産のうち、株主が持分とされる資産を指します。
項目例として
- 資本金(株主から出資を受けた資金)
- 資本剰余金(資本準備金、その他資本剰余金)
▶︎資本準備金(出資のうち、資本金に計上しない資金) - 利益剰余金(利益準備金、その他利益剰余金)
▶︎利益準備金(財務基盤強化のため、配当金額の10%を積立) - 自己株式(自社株買いの金額)
② 評価・換金差額等
有価証券、土地などの評価に変化が生じた場合に差額を計上します。
③ 新株予約権(発生した場合に計上)
新株予約権(新たに株式の交付を受けられる権利)を発行したときにその金額を計上します。
④ 非支配株主持分(連結決算のみ)
連結子会社のうち、親会社が所有していない少数株主(非支配株主)の持ち分を指します。
貸借対照表の分析
短期の支払い能力
① 流動比率
1年以内に現金化できる資産と、1年以内に返済が発生する負債との割合より、短期の支払い能力を示します。
【公式】流動資産/流動負債×100
▶︎上記参考金額で計算すると、
▶︎60,000/35,000*100=171.4%
目標は150%以上 ▶︎200%以上で優良
② 当座比率
換金性が低い棚卸資産などを除いた資産(当座資産)と流動負債との割合より、短期の支払い能力を『流動比率』よりも厳しく示します。
【公式】当座資産/流動負債×100
▶︎上記参考金額で計算すると、
▶︎45,000/35,000*100=128.6%
目標は100%以上 ▶︎150%以上で優良
③ 現金預金比率(現預金比率)
現金預金と流動負債との割合より、短期の支払い能力を『当座比率』よりも厳しく示します。
【公式】現金預金/流動負債×100
▶︎上記参考金額で計算すると、
▶︎20,000/35,000*100=57.1%
緊急時に対応するため、できるだけ高いほうが良い
長期資本の適合性
① 固定比率
会社が保有する資産と、自己資本との割合より、長期資本の適合性を示します。
【公式】固定資産/自己資本×100
▶︎上記参考金額より、自己資本を30,000と仮定して計算する
▶︎40,000/30,000*100=133.3%
100%以下であれば自己資本内 ▶︎150%以上だと過剰投資の可能性あり
② 長期固定適合率
会社が保有する資産と、長期負債と自己資本との合計金額との割合より、長期資本の現実的な適合性を示します。
【公式】固定資産/(固定負債+自己資本)×100
▶︎上記参考金額より、自己資本を30,000と仮定して計算すると、
▶︎40,000/65,000*100=61.5%
目標は100%以下 ▶︎100%以上だと資金繰りがきびしい状態
資本の安定性
自己資本比率
自己資本と総資産(総資本)との割合より、企業の安全性を示します。
【公式】自己資本/総資産×100
▶︎上記参考金額より、自己資本を30,000と仮定して計算すると、
▶︎30,000/100,000*100=30%
30%以上で及第点 ▶︎40%以上で安全性が高まる
貸借対照表【結論】
企業の財務状態は『貸借対照表(B/S)』を見る
貸借対照表(B/S)は、企業の『安全性』がわかる
企業の安全性は『流動比率』『固定比率』『自己資本比率』を見る
おすすめの書籍
ストーリーでわかる財務3表超入門
著者は、大手鉄鋼メーカー▶︎米国クレアモント大/ピーター・ドラッカー大学院でMBA取得▶︎現在は経営コンサルタントをされている『國貞克則』さんです。
本記事では、貸借対照表を題材としているため、それに関連する内容に絞って記載していますが、財務三表はお互いの弱点をカバーするため、一緒にみるべき書類です。
本著は、つなげて見ることで、点の情報ではなく、線や面の情報として読めるので、初心者でも理解しやすい内容になっています。
女性起業家のストーリー仕立てになっているので、硬い文章が苦手な方も読みやすいと思います。
『会計』『財務』に苦手意識がある方におすすめです。