『損益計算書』は聞いた事はあっても見たことがある方は少ないでしょう。
実は、会社の『成長性』と『収益性』がわかる重要な書類です。
見るPOINTがわかれば、数値で判断できます。
わかってくればおもしろい!
損益計算書とは
財務諸表
財務諸表は、一般的には『決算書』とも呼ばれていますが、上場企業および非上場の大企業は、決算報告の開示義務があるので、開示後は誰でも見ることができます。
報告書類の中でも『財務三表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書)』は企業の経営状態、財務状態、お金の流れを見る重要な書類です。
財務三表によって、企業を数値で分析できます。
- 損益計算書 ▶︎企業の『成長性と収益性』
- 貸借対照表 ▶︎企業の『安全性』
- キャッシュ・フロー計算書 ▶︎企業の『資金の使い方』
損益計算書
企業の経営状態を知ることができる財務諸表(決算書類)です。
『収益−費用=利益』が記載されており、狭義で言えば『どれだけの売上(営業収益)を上げて、どんな費用を使って、どれくらいの利益をあげたか』を見ることができます。
経営層や財務部門、対外的にはステークホルダー(株主などの利害関係者)は重要な書類として見ていますが、社内の財務部門以外の部署の人はあまり見ていないようです。
企業の『成長性』『収益性』を読み取ることができる資料ですので、自社および同業他社、余裕があれば他業界の企業の損益計算書を、定期的にチェックしていくと見えてくることが増えます。
財務諸表を全部見ていただきたいですが、『損益計算書』から見ていきましょう。
損益計算書の分析
前提として
会社経営には必ず目標数値があり、決算書類では『通期業績予想』として開示しています。記載箇所は速報書類である『決算短信』に記載してあります。
社内では『予算』で見ることが多いですが、業績予想と予算の数値はほぼ同等です。
決算書類は、3カ月(四半期)ごとに報告するため、単純計算では四半期ごとに25%・50%・75%・100%をベースに達成率を見ます。会社によっては特性があり、成長している会社などは、期の後半のウエイトが高くなるので、その分を加味して見る必要があります。
社内では『予算達成率』で、月別予算がある場合は『予算対比』で見ていきます。
業績予想に大きくブレが生じる時(対業績予想の売上高±10%以上、利益(営業利益、経常利益、当期純利益)±30以上)は、『上方修正』もしくは『下方修正』を開示する義務があります。
『業績予想』は『ステークホルダー(株主などの利害関係者)』に対する約束ですので達成は必須です。そのため、社内でも予算達成は必須であり、数値を見ることは当然の行為になります。
成長性
前年増減率(前年対比)
決算書類では、『決算短信』にて売上高、営業利益、経常利益、当期純利益の『前年増減率』が記載してあります。
『決算短信』では増減率【(今年実績/昨年実績−1)×100%】で記載されますが、社内では前年対比【今年実績/昨年実績×100%】のほうが把握しやすいです。
業界の成熟度やトレンドによって基準は違いますが、前年超えである前年増減率0%以上(=前年対比100%以上)はひとつの指標です。一般的に『二桁成長』と言われる、前年増減率10%以上(=前年対比110%以上)になると優良企業として認識されます。ただし、創業から間もない企業では基礎数値が低いため前年対比130%以上の異常値がでたりしますので、その点は考慮したほうが良いです。
『売上高』に関しては、前年対比が高ければ必ず良いと言うわけではありません。成熟している業界や会社では前年対比120%が事業継続の限界という説もあり、前年対比120%以上の目標を掲げ、翌年以降に事業崩壊を招くケースも少なくないようです。継続不可能な事業拡大は必ず歪みがくるので要注意です。
小売業や飲食業、サービス業などは『月次報告』もあり、月単位で『前年同月比』を確認できるので、成長性をより把握しやすくなっています。
成長性を数値で把握できるのは『前年増減率(前年対比)』
収益性
収益とは売上(営業収益)などを指しますが、収益性は売上に対する利益の割合を指します。
収益性は5つの利益を軸に見ます。
① 売上総利益
会計上は売上総利益ですが、一般的には粗利益(粗利)と呼ばれることが多いです。
いわゆる商売のタネ(商品やサービス)の利益です。売上から売上原価(商品なら仕入原価etc)を差し引いた利益です。粗利率(粗利/売上×100%)で収益性を見ます。
粗利率の目安は、製造業20〜30%、卸売業10〜15%、小売業20〜30%、飲食業50〜70%といったところが相場です。
小売業でもSPA(製造小売)では40%を超えており、ファッションの『ファーストリテイリング』は45〜50%、家具の『ニトリホールディングス』は55%前後と粗利率が高いです。
製造業でも、平均年収2000万を超える『キーエンス』は、粗利率80%を超過しています。オンリーワンサービスによる優位な値決めがなせる技です。すごすぎる企業です。
② 営業利益
営業活動で稼いだ利益です。営業利益率(営業利益/売上×100%)で収益性を見ます。
粗利益から営業活動でかかった経費(人件費、販促費etc)を差し引いた利益で、営業上における最終利益とも言えます。全体目標数値を各事業部門に配分して、事業別の目標利益として進捗管理に利用されることが多いですし、重要な指標の一つです。
③ 経常利益
企業活動で稼いだ利益です。経常利益率(経常利益/売上×100%)で収益性を見ます。
営業利益から営業活動外での損益(受取・支払利息、雑収入etc)を足した利益で、企業目標の軸となる利益です。
営業部門の利益予算として営業利益を利用する企業は多いですが、ステークホルダーが見る数値なので、管理会計(事業予算などを簡便的見られるようにした社内向けの会計)を導入し、営業外損益を予算にうまく配賦して、営業部門でも経常利益を利益予算にする企業も増えてきています。
経常利益率は、製造業では一般目安3%〜10%優良企業目安10%以上、卸売業では一般目安0%〜3%、優良企業目安5%以上、小売業では一般目安1%〜5%、優良企業目安5%以上、飲食業では一般目安5〜10%が多く、優良企業目安10%以上といったところが目安です。
売上総利益でもふれた企業の『ニトリホールディングス』は約17%、『キーエンス』に至っては約55%と驚異的な収益性です。
④ 税金等調整前当期純利益
税金を払う前の利益です。経常利益に臨時発生(固定資産売却益・損・除却損、有価証券売却益・損etc)した損益を足した利益です。
文字通り、通常はそんなに計上する項目がないので見ることは少ないと思います。臨時的と言っても、自社の場合は事前に知り得ていることが多いです。ただし、他社で特別利益や特別損失を計上してときは、なにかがあったと注目するきっかけになったりします。
業績不振になった時に持っている固定資産を売却して利益を計上したり、逆に取得原価より安く処分した時に売却損を計上したりします。
普段は注目はしませんが、大きな金額が計上された時に深掘りして分析しましょう。
⑤ 当期純利益
企業の最終利益です。当期純利益率【当期純利益/売上×100%】で収益性を見ます。
子会社の数値を合算した連結決算書の場合は、自社(親会社)以外の株主(非支配株主)の利益を控除した『親会社株主に帰属する当期純利益』を計上します。
実効税率(法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業の合計が売上に対する割合)の平均は2019年末時点で30%前後であるので税前利益の70%前後が当期純利益になります。
企業によっては実効税率が30%を大きく下回っているケースはあるが、税制優遇をうまく使っているケースがあるので深掘りして分析したらよいと思います。自社でもできることが見つかるかもしれません。
収益性を把握できるのは『5つの利益』
損益計算書【結論】
企業の経営状態は『損益計算書(P/L)』を見る
企業の成長性は『前年増減率(前年対比)』を見る
企業の収益性は『5つの利益』を見る
おすすめの書籍
会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方
良さそうな本を3冊ほど読みましたが、初心者が読むならこの本が一番読みやすかったです。
自分は教育部門にいるときに、いろんな本を読みあさって資料を作っていましたが、ずっと間違って覚えていたことも発見しました。
私の目標は、初心者の方が自社の財務諸表を見るようになり、競合他社も見るようになり、将来的に株式投資を始めたときに、各企業の財務を見られるぐらいになってほしいです。
そのためも基礎知識はもってほしいですが、難しい本が多い中、勉強した私がみてもわかりやすいなとおもいました。もちろん財務・経理部門の方が見ると物足りないと思うでしょうが…
企業に所属しているなら、この本でなくてもいいですが、正しく学べる本を読んで、財務の勉強したほうがよいと思います。会社のためでもありますが、必ず自分のためにもなります。