気になる企業の決算説明資料で考察!
金融目線というよりは、打ち手がおもしろいかという個人的視点で見て、振り返りができる勘弁的なメモになるようにしたいと思っています。
参考資料として…
- 企業ホームページならびに決算説明資料(2020年5月期決算説明資料)
- 直近四半期実績の出典として『Kabtan』
- 直近データリンク先として『バフェット ・コード』
を利用しています。感謝です。
今回は、前回に引き続きドラッグストアで気になる企業!
↓前回記事
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【企業分析】小売業/ドラッグストア/Genky DrugStores(9267)
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気になる企業
出典:企業HP トップページ(http://www.createsdhd.co.jp)
- クリエイトSDホールディングス(証券CD:3148)
https://www.buffett-code.com/company/3148/
神奈川県横浜市発祥のドラッグストア。
出店エリア
出店エリアは以下通り
出典:2020年5月期決算説明資料_11頁
発祥の神奈川県ではトップシェアで、2位の『ハックドラッグ(ウエルシアHD)』の2倍以上の店舗数を有す。関東を中心に出店している。
競合状況
出店エリアで競合する大手ドラッグストアは以下2社
- ウエルシアホールディングス(3141)2020年2月期:8,682億円
https://www.buffett-code.com/company/3141/ - カワチ薬品(2664)2020年3月期:2,703億円
https://www.buffett-code.com/company/2664/
関東中心であるので、『マツモトキヨシHD』や『サンドラッグ』とは出店エリアは重なるが、都市型主体の両社に対し、『クリエイトSD』は郊外型主体であるので、競合相手から除外。逆に、競合しているエリアは少ないが、ターゲット客層が近くで立地がバッティングしていく『カワチ薬品』を加える。
いずれにしても、一番の競合相手は業界最王手の『ウエルシアHD』
↓ドラッグストア業界にふれた記事
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【投資分析】日本経済の予言本を読んでみた!アフターコロナ?
続きを見る
直近の業績
直近の四半期実績は…
出典:Kabutan決算速報(https://kabutan.jp/news/?b=k202007130012)
前年同月比で売上高が+15.5%、経常益で+45.7%と好調に推移。
競合他社との比較でも…
3社とも、コロナ特需の恩恵を受けている。利益面は後述の二次的事象もあって経常利益率が増加している。逆に『ウエルシアHD』の第一四半期の経常利益が思ったほど伸びていないことが気がかり。別途、調査してみたい。
出典:バフェット ・コード_企業ページ(8月23日時点)
PERはほどほど。売上伸長や利益率、各種取り組みからもう少し評価されてもよいかなと思うが、比較対象が『ウエルシアHD』であるので2番手感が否めない。
出典:2020年5月期決算説明資料_4頁
ドラッグストア業界全体の3月〜5月におけるまとめのような内容。
- 感染予防(マスク、アルコール、ハンドソープ等)を中心とした特需あり
- インバウンド減による都市型店舗(駅前、繁華街等)は売上減(特に化粧品)
- 巣ごもりで日焼け止めを中心とした外出用季節商材の売上減
上記3点が業界全体の状況
二次的事象として、集客戦略を自粛したが…
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1値下げ減による粗利率増
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2チラシ等の販促費減による販促費減
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3必需品購入で客数が思ったより減少しなかった
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4結果として、営業利益(&経常利益)が大幅増
上記の状況が郊外型ドラッグストアに起きていた事象。
出典:2020年5月期決算説明資料_14頁
既存店売上の月次推移を見ると、郊外型ドラッグストアの典型的は推移であり、コロナ特需の恩恵を受けたことが大きいと見てとれる。
出典:2020年5月期決算説明資料_15頁
セグメント別の売上を見ても、化粧品以外は二桁成長をしており、そつなく売上を取れるバランス型。ドラッグストアが生活必需品を見事にカバーしていることがわかる資料。
今後の見通し
決算説明資料を見てみると…
出典:2020年5月期決算説明資料_23頁
世界一の小売業である『ウォルマート』の代表戦略である”EDLP(Everyday Low Price)”。日本でも30年以上前から提唱されているが導入している企業は少なく、チラシでの日替り商品等で一定期間の値下げなどをする”ハイ&ロー戦略”による瞬発的に売上をあげる手法から脱却できていない。
ただ、食品スーパーの『オーケー』や、同じドラッグストアの『コスモス薬品』や『ゲンキー』などの好調要因は”EDLP”の導入にある。
”EDLP”を導入すれば粗利率は低下するが、価格変動による波動が抑えられることで人件費や物流費などの経費が抑制されて営業利益(&経常利益)は確保できる。上記導入企業が実践している。
”EDLP”導入を成功させれば、結果としてタイマン(他社店舗との競争)に強い店舗が出来上がるので、大手企業との競合でも勝負できる。
出典:2020年5月期決算説明資料_24頁
特筆すべきは”セミセルフレジの導入”である。”セルフレジ”などは、『イオン』などの大型スーパーなどで目にしたり、利用している方も多いと思うが、”セミセルフレジ”はここ数年で導入が進んでいる。
”セミセルフレジ”とは、レジ作業の工程上、①商品の読み込み(バーコードスキャン)する部分と②代金支払いの部分を分けて、①は従来通り店舗スタッフが、②は顧客が1人で精算する流れ。
”セルフレジ”はオペレーション上、導入する場合は1店舗に4台以上必要になり、イニシャルコストが高くなる。その点、1台の導入から効果を得られる”セミセルフレジ”のほうが投資回収期間は短い。
また、”セルフレジ”ではバーコードスキャンに不慣れな方によるレジ渋滞が度々発生する。その点、不慣れな部分を店舗側で行い、精算部分だけをセルフにするためレジ通過率は高い。結果、生産性はあがる。
レジ作業は不人気職で、特に忙しい店舗のレジ人員の確保は難しいようだ。将来的には”Amazon Go”のように通過するだけで自動精算する時代は来るだろうが、実現には時間がかかるであろう。しばらくは有人レジなので、できるだけ作業人時を減らす打ち手が必須。
出典:2020年5月期決算説明資料_25頁
実は調剤事業も順調に拡大している。
ECが拡大していく中、規制による参入障壁の高い調剤事業は、他業態との差別化をできる大きな武器。ただし、薬価改正による利益率の低下や、薬剤師の採用難への対応は必須。
前頁にある非薬剤師のオペレーション構築(0420通知対応)や、本頁にあるオンライン服薬指導(0410通知対応)などは大手に遅れることなく進めることが重要。
〜通知って何?
上記の”0420通知”や”0410通知”は業界の資料をみると最近よく使われている文言で、厚労省の医薬・生活衛生局総務課が発信した通知を指しています。
- ”0402通知”…2020年4月2日発信の『薬生総発0402第1号 調剤業務のあり方について』
▶︎要約すると…条件付きで非薬剤師の調剤補助が認められた? - ”0410通知”…2020年4月10日発信の『薬生総発0410 新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて
▶︎要約すると…コロナウィルス感染拡大時の非接触対応
出典:2020年5月期決算説明資料_26頁
来期予想は消極的。新規出店数分と既存店伸長を加味した数値からは5%程度ショートしている組み立てである。2020年3月〜5月のコロナ特需による反動減を加味していると思われるがとても慎重である印象。妥当であるかどうかは月次推移を見ながら予測したい。
私見としては…
『ウエルシアHD』など大手ドラッグストアと比べると2番手感があって目立ってはいないが…
- 成長性も利益率も及第点
- ディスカウントや生鮮導入による店舗競争力強化(タイマンで勝つ)
- 調剤・介護事業の専門性強化(EC対抗)
上記を全て有しているバランス型の優良企業!
言うなれば、大手企業の後ろを走ってスリップストリームにいる状態で、トップ企業に並ぶチャンスはゼロではないかなという印象。
アピール不足な部分は、まじめで慎重なのか、したたかに隠しているかはわからないけど、短期的に株価が上昇するようには感じないが、不況に強いディフェンシブな業界なので長期目線ではリスクは低いかな?
半沢直樹ぐらい、劇的な戦略を示してくれるとめちゃくちゃ注目されると思うな…
衝動的に買ってしまいました…