株式投資を始めたけど、どの株を買っていいかわからないですよね。
投資スタンス(短期or長期)によって銘柄の選び方も変わってきます。仕事をしながら中長期で投資を考えている方に長期投資の分析手法『ファンダメンタルズ分析』を解説!
分析できるようになると次がみえてくる!
初めて読む方にもわかるように、要点を絞って簡単に説明します。
株式投資の銘柄分析手法
① ファンダメンタルズ分析
業績や財務状況などから企業の本質的価値と株価のギャップを予測する分析手法
- 決算書による企業の業績・財務の分析
- 指標による株価の割安感を分析 など
▶︎中長期投資(数カ月〜数年)向き
メリット
- 中長期の成長やリスクを把握できる
- 短期的な変動に左右されない
▶︎日々の生活スタイルを維持しながら取り組める(兼業投資でもやりやすい)
デメリット
- 分析が難しく、情報収集が大変
- 結果が出るまで時間がかかる
▶︎割安感の判断は難しい▶︎常に情報収集が必要
長期投資の銘柄選定は『ファンダメンタルズ分析』
② テクニカル分析
株の出来高やチャートなど投資家の行動(心理)から株価を予測する分析手法
- トレンド分析(移動平均線、ボリンジャーバンドetc)
- オシレーター分析(RSI、ストキャスティクスetc) など
▶︎短期投資(デイトレード、スイングトレード)向き
メリット
- 短期的な株価の変動が読める
- 将来に起こるリスクは影響しない
▶︎分析を向上させると勝率があがりやすい(専業デイトレーダーが有利)
デメリット
- 予想が外れるケースがある
- メンタルコントロールが求められる
▶︎株式投資は『ゼロサムゲーム』▶︎勝つ側は不安を作って負ける側をつくる
短期投資の銘柄選定は『テクニカル分析』
ファンダメンタルズ分析1【決算書で見る】
① 基本数値(売上高、営業利益、経常利益、当期純利益)
決算書の基本数値は以下の4つ
・売上高 ▶︎企業の本業による代金総額
・営業利益 ▶︎企業の本業による利益
・経常利益 ▶︎企業の経営活動による利益
・当期純利益 ▶︎企業の最後に残った利益
✅前年増減率は?
- 0%以上 ▶︎及第点(前年超え)
- 10%以上 ▶︎優秀(二桁成長)
- 20%以上 ▶︎急成長(株価に大きく影響)
✅業績予想は?
- 次期以降の株価を見る軸となる数値
▶︎今期に対し増減率が高ければ、株価に大きく影響
業績予想の修正(上方修正・下方修正)
業績予想と実績に大きな乖離がある場合に修正を発表(上場企業は開示義務あり)
基準:売上高±10%、営業利益・経常利益・当期純利益±30%
✅業績予想の修正の可能性は?
- 修正発表はインパクトが高く株価に大きく影響するので、事前に業績推移から読む
② 損益計算書(収益性)
企業の収益性を見る決算書
・営業利益率=営業利益率/売上高×100
本業で稼いだ利益の収益性を見ます。売上から売上原価を差し引いた売上総利益から、販売費及び一般管理費を差し引いた利益です。
✅経費で大きく増えている項目はないか?
- 売上の伸長よりも、仕入価格や人件費や広告費などを抑えると利益率が向上
・経常利益率=経常利益率/売上高×100
企業の経営活動による収益性を見ます。営業利益に営業外損益(受取・支払利息etc)を足した利益です。
✅営業利益率と比べてどうか?
- 資金調達がうまくできている会社は、営業利益率よりも経常利益率が高くなる傾向
・当期純利益率=当期純利益/売上高×100
最後に残った利益の収益性を見ます。経常利益に特別損益(固定資産売却益・損etc)を足した税金等調整前当期純利益から、調整した法人税を差し引いた最終の利益です。
✅特別損益が発生した場合、その理由は?
- 通常発生しない臨時的な損益はなぜ発生したのかを追及
詳細は『数値分析の基礎知識【損益計算書(P/L)】』で説明しています。
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【初心者向け】財務数値分析の基礎知識【損益計算書(P/L)】
続きを見る
③ 貸借対照表(安全性)
企業の安全性を見る決算書
・流動比率=流動資産/流動負債×100
流動比率で短期の支払い能力を見ます。
✅流動比率は100%以上か?
- 100%以下 ▶︎支払い能力不足(対策が必要)
- 150%以上 ▶︎企業の目標値
- 200%以上 ▶︎優良
・固定比率=固定資産/自己資本×100
固定比率で長期の適合率を見ます。
✅固定比率は100%以下か?
- 100%以下 ▶︎自己資本で企業活動ができている
- 150%以上 ▶︎投資が過剰になっていないかチェック
・自己資本比率=自己資本/総資産×100
自己資本比率で企業の安全性を見ます。
✅自己資本比率は30%以上か?
- 30%以下 ▶︎要注意(20%以下は対策要)
- 30%以上 ▶︎及第点
- 40%以上 ▶︎安全性が高くなる
注意点)超低金利時代▶︎負債コスト(他人資本コスト)低減▶︎財務レバレッジ増傾向▶︎自己資本比率の重要度減
詳細は『数値分析の基礎知識【貸借対照表(B/S)】』で説明しています。
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【初心者向け】財務数値分析の基礎知識【貸借対照表(B/S)】
続きを見る
④ キャッシュ・フロー計算書(資金の使い方)
企業の資金の使い方を見る決算書
・営業活動によるキャッシュ・フロー(営業CF)
✅営業CFはプラスになっているか?
- 営業CFがプラス ▶︎企業活動で資金を生み出している
- 営業CFがマイナス ▶︎企業活動で赤字?現金回収ができていない?
・投資活動によるキャッシュ・フロー(投資CF)
✅フリー・キャッシュ・フロー(FCF=営業CF+投資CF)はどうか?
- FCFがプラス ▶︎営業活動で稼いだ資金の範囲で投資できている
- FCFがマイナス ▶︎投資内容は適正か?
・財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)
✅財務CFはマイナスになっているか?
- 財務CFがプラス ▶︎借入が増えている…何に使っている?
- 財務CFがマイナス ▶︎返済が進んでいる
詳細は『数値分析の基礎知識【キャッシュ・フロー計算書】』で説明しています。
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【初心者向け】数値分析の基礎知識【キャッシュ・フロー計算書】
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【補足】決算説明資料
株主に向けて会社業績や財務状況を説明した資料です。
ビジネスモデルやマーケット比較を用いて会社の成長戦略を説明しており、来期業績予想の根拠となる資料でもあります。会社戦略を知ることで、会社の成長性を測ります。
✅ビジネスモデルはどうか?
- 業界の市場規模(将来に需要が増えそうか)▶︎成長余地
- ターゲット(対象顧客) ▶︎ボリューム
- ポジショニング(競争優位にあるか)▶︎収益性
- サービス内容(オリジナル性)▶︎差別化
- 販売・利益モデル、ストック性 ▶︎継続性 など
補足)VC(ベンチャーキャピタル)は、市場規模を重要視しており、
- TAM ▶︎獲得可能な最大市場規模(マーケットサイズ)
- SAM ▶︎獲得可能な自社の商品・サービスの市場規模(ターゲット)
- SOM ▶︎実際に自社の商品・サービスで獲得を狙う規模(マーケットシェア)
などを使った分析・予測をベンチャー企業に求めます。
ファンダメンタルズ分析2【指標で見る】
① PER(株価収益率)※Price Earnings Ratio
投資回収年数から、株価の割安感を判断する指標 (単位:倍)
・EPS(1株あたり当期純利益)=当期純利益/発行済み株式数
・PER=株価/EPS ▶︎《時価総額/当期純利益でも計算可》
例)『PER10倍』=『投資回収年数が10年』という意味
✅倍率はどうか?
- 10倍以下 ▶︎一般的に割安と見ている
- 15倍前後 ▶︎平均並み(基準)
- 20倍以上 ▶︎一般的に割高と見ている
(成長企業は先行投資により高めに出る傾向)
注意点)将来性がない業界・企業はPERが低くなる傾向
成長性が高い企業×PER10倍以下=有望
② PBR(株価純資産倍率)※Price Book-value Ratio
純資産の価値から、株価の割安感を判断する指標 (単位:倍)
・BPS(1株当たり純資産)=純資産/発行済み株式数
・PBR=株価/BPS ▶︎《時価総額/純資産でも計算可》
例)『PBR1倍以上』=『企業の純資産より時価総額(株価×発行済み株式数)が高い』という意味
✅倍率はどうか?
- 1倍以下 ▶︎一般的に割安と見ている
- 1倍以上 ▶︎一般的に割高と見ている
注意点)成長性が高い企業▶︎PBRが高くなる傾向(評価されているともとれる)
PBRは目安として把握(割高も高評価も1倍を超える)
③ ROE(自己資本利益率)※Return On Equity
投資額に対し、生み出した利益の割合から収益性を示す指標
・ROE=当期純利益/自己資本×100
✅自己資本利益率は10%以上か?
- 8%以下 ▶︎利益率が低くくないか?
- 8%以上 ▶︎及第点(日本の基準)
- 10%以上 ▶︎優良(世界の基準)
注意点)超低金利時代▶︎負債コスト(他人資本コスト)低減▶︎財務レバレッジ増傾向
企業視点)負債コストと株主資本コストのバランスを考えた加重平均資本コスト(WACC)で資金調達
結果)他人資本増▶︎自己資本利益率が高く見える傾向▶︎絶対的指標としては不完全
ROEは目安として把握(他人資本増▶︎ROE増の傾向)
【補足】自社株買い
企業が発行した株式を、市場から買い戻すこと
効果▶︎1株あたりの資産価値が向上
発行済み株式数が減少▶︎増配(1株あたりの配当金を増加)が期待されます。
- PER ▶︎純利益が減少 ▶︎分子が減るのでPERは下がる(形上、割安になる)
- ROE ▶︎自己資本が減少 ▶︎分母が減るのでROEはあがる
自社株買い▶︎増配を期待▶︎株価が上昇しやすい
ファンダメンタルズ分析【結論】
長期投資の銘柄選定は『ファンダメンタルズ分析』
決算書を使って、企業の業績や財務状況を分析
指標を使って、株価の割安感を分析
長期投資は、成長性が高く、割安な銘柄を探す