気になる企業の決算説明資料で考察!
金融目線というよりは、打ち手がおもしろいかという個人的視点で見て、振り返りができる勘弁的なメモになるようにしたいと思っています。
参考資料として…
- 企業ホームページならびに決算説明資料(2020年6月期決算説明資料)
- 直近四半期実績の出典として『Kabtan』
- 直近データリンク先として『バフェット ・コード』
を利用しています。感謝です。
気になる企業
出典:企業HP トップページ(http://www.genky.co.jp/)
- Genky DrugStores(証券CD:9267)
https://www.buffett-code.com/company/9267/
福井県発祥のドラッグストア。2000年以降、メガドラッグストアの出店を主力にしていたが、2015年以降は300坪の標準レイアウトで高速出店している。
出店エリア
出店エリアは以下の通り
出典:企業HP 店舗・チラシ検索(http://www.genky.co.jp/shop/)
地場の福井県でドミナントを形成したあと、石川県、岐阜県、愛知県への出店を強化している。
岐阜県では、地場企業の…
- ユタカファーマシー(富士薬品グループ)
- 中部薬品(バローグループ:屋号「V・drug」)
上記2社の店舗数を超過して地域シェアもトップに躍り出ている。
競合状況
出店エリアで競合する大手ドラッグストアは以下2社
- スギホルディングス(7649)2020年2月期売上:5,419億円
https://www.buffett-code.com/company/7649/ - クスリのアオキホールディングス(3549)2020年5月期売上:3,001億円
https://www.buffett-code.com/company/3549/
以後の数値は上記2社と比較
いずれにしても、一番の競合相手は業界最王手の『ウエルシアHD』
↓ドラッグストア業界にふれた記事
-
【投資分析】日本経済の予言本を読んでみた!アフターコロナ?
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直近の業績
直近の四半期実績は…
出典:Kabutan決算速報(https://kabutan.jp/news/?b=k202007270003)
前年同月比で売上高が+36%、経常益で+61%と好調に推移。
競合他社との比較でも…
ここ数年で業界内でも高い伸長を示していた『クスリのアオキHD』をも超過している。
注目するポイントとすれば、直近四半期は経常利益率5.1%を出しており、小売業の及第点である5%を超過している。同タイミングは他社もコロナ特需もあり、高利益率を出しやすい時期ではあるが、今後も経常利益率5%以上超過していくようであれば企業体質が強化されたと見れる。
出典:バフェット ・コード企業(8月18時点)
PERも約15倍と平均値。大手10社の中央値が20倍以上であるので、比較的評価されていない。
今後の見通し
直近の”2020年6月期決算説明資料”を見ると…
出典:2020年6月期決算説明資料_3頁
今期の好調要因は、2019年秋から始めた”価格強化”が挙げられる。具体的には”毎日特価”と銘打って、価格敏感性が高いNB(ナショナルブランド)のEDLP戦略。
戦略的には、業界大手の『コスモス薬品』の戦略に似ているが、ポイント販促も実施しているため販管費率高めに出ている。『コスモス薬品』以外の大手ドラッグストアの戦略がポイント販促が主流であり、双方の販促に対応したハイブリッドな打ち手である。
出典:2020年6月期決算説明資料_8頁
他社はコロナ特需の反動を加味して控えめのところが多いが、同社は今期並の伸びで来期予想をしていて強気に攻めていく印象。
粗利率は21.9%→21.0%と価格強化も継続する流れに見えるが、販管費率も抑えて経常利益率は同等推移を目指している。
出典:2020年6月期決算説明資料_11頁
中期計画は業界としては驚異的な計画を出している。要するに、今年から3年間で売上を約2倍にする計画で、272店舗の出店を予定している。2021年6月期は60店舗の出店を計画しているので、残りの2年で212店舗を出店しなくてはいけない。
数値の組み立てはあっているが、本当に上記出店ができるかが鍵になる。大手の過去と比較しても異常な出店比率であるため心配な部分はあるが、仮に利益率も落とさず上記を達成できたとすれば、株価も3年間で2倍になる計算になる。大きな勝負をしているのはたしかであるが、企業の力も運も試される!
出典:2020年6月期決算説明資料_12頁
特筆すべきは出店エリアであり、岐阜県は継続出店するとして、石川県と愛知県への大量出店が注目される。石川県は『クスリのアオキHD』、愛知県は『スギHD』のお膝元であり、双方に戦争をふっかけている状況。対する両社も、主力の県での既存店売上に影響し、会社全体の業績に響くため負けられない戦いになる。
出典:2020年6月期決算説明資料_21、22頁
従来の価格強化と合わせて、生鮮食品を強化戦略としている。
業界に先駆けて”プロセスセンター”を導入し、自前主義で攻勢をかける。
22頁の表現はおもしろく、先に生鮮食品の導入で成功している『クスリのアオキHD』はテナント型であるのに対し、自前主義の優位性をアピールしていてライバル意識が剥き出し!
”餅は餅屋戦略”の『クスリのアオキHD』と”自前主義戦略”の『ゲンキー』のどちらに軍配があがるか非常に楽しみである!
私見としては…
価格戦略と高速出店で業界トップ水準の伸長を見せていることは確かであるが、中期計画が攻めすぎていることが懸念…ただ、本当に実現できたとすればすごいと思う。
経常利益率をもう少し上げたほうが株価があがりやすいと思うが、ドラッグストアも業界収斂が始まっているので勝負する戦略は理解できる。
深読みすると、上記中期計画の出店数は、全て出店で補おうとすると厳しいので、ウルトラCとしては”M&A”も考えているかなと…あくまでも私見…
いずれにしても、小売業で生き残る会社は、ライバルがいないオリジナル性をもっているか、タイマンに強いかでしょ。